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5月27日から28日にかけてBCS にて、また、6月10日から11日にかけてMilamdecにて、昨年末に実施したニーズ調査を元にプラネットファイナンスが開発・改良を行った金融リテラシーモジュールのパイロットテストを実施しました。
このモジュールは、アダルトラーニングの観点から、SLE(Structured Learning Exercise)の手法に基づき開発したものです。モジュールは一連のパッケージとなっており、まず“Why”つまり、なぜ貯蓄が必要なのか、なぜ多重債務はよくないのか等について理解した後“how”つまりどのようにして帳簿をつけるのか、どのようにして収入を増やすのかといった技術を伝える流れになっています。貧困層に向けた金融リテラシーにおいて、帳簿のつけかた等具体的な技術を直接伝えることも重要ですが、それ以前にまず、貧困者自らが貧困から抜け出ることは可能であるという強い信念の元に、なぜ(例えば)帳簿をつけることが重要なのかといったことを理解することが必要であると考えます。
今回のパイロットテストでは計6つのセッションをテストしましたが、ここではそのうちの1つ“Noodles for Life”を紹介します。
これは、年をとって仕事を退職し、収入がなくなった時点から寿命年齢までに必要となる、最低限の食事(この場合、ヌードルを想定)の費用の合計金額を見積もり、在職中に貯蓄をすることの必要性が理解できるように意図されたものです。
BCSセンターミーティングの様子
・ヌードルの価格(40ペソ(約92円)× 2(人:配偶者含む) × 3(回:1日における食事回数) = 1日に必要な食費
・1日に必要な食費× 365(日:1年間の日数) = 1年に必要な食費
・1年に必要な金額× 15(退職後の年数) = 退職後必要な食費の合計
フィリピンをご存知の方からすると、最低一食40ペソというのは高すぎるように聞こえるかもしれません。実は、ファシリテーター側は初め20ペソで始める予定でしたが、参加者した顧客から「自分たちが65歳になっているときには物価がもっと上がっているはずだ」という意見が出され、全員で話し合った結果、一食を40ペソと見積もりました。
最後に算出された退職後必要な食費の合計が100万ペソ(約230万円)を越えた際には、参加者全員が想像もしていなかった大きな金額に驚きを隠せない様子でした。テスト後のアンケートでは、「初めて貯蓄に関して考える良い機会になった」等、95%以上の参加者から非常に満足との回答を得ることができました。
同行したMFIのスタッフからは、「退職など、今まで顧客が考えたことのないトピックであったので、参加者皆が興味を持って聞いていた。」、「ファシリテーションを間近に見ることで、自分たちが実施するためにもどのような工夫が必要か知る、非常に良い経験になった。」といった感想をいただきました。プラネットファイナンススタッフとMMCとの反省会では、「トレーニング後実施するアンケートを英語だけでなく現地語でも作成する」、「参加者がトレーニングで学んだ内容を復習できるよう、1頁の資料を配布してはどうか」など、次回に活かすべき気付きを共有しました。
金融リテラシートレーニングの様子①
今回のパイロットテストの結果を元にさらにプログラムの改善を行った後、完成したモジュールを使用して、パートナーMFIの職員に対して、金融リテラシートレーニング・オブ・トレーナーズ(ToT)を実施する予定です。ToTでは、来年8月のプロジェクト終了後もマイクロファイナンス機関のスタッフ自らが、顧客に対してセッションを行えるよう、ファシリテーション方法やモジュールの使用方法についてのトレーニングを実施する予定です。