台風ハイエン被災零細農民の生計向上プロジェクト

フィリピンでの主な活動を完了しました

2018.12.27

2016年に開始した草の根案件ですが、今月をもって本案件のフィリピンでの主な活動を完了しました。これを記念して、12月3日~4日に本案件の終了セミナーを実施しましたので、その様子を簡単にご報告させていただきます。場所はレイテ島のタクロバン市、Hotel Alejandroです。

本案件の直接的参画者であるパートナーMFI、現地カウンターパート(ACCESS AdvisoryおよびNational Confederation of Cooperatives NATCCO)、JICAフィリピンに加え、農業省農業研修局(ATI)、フィリピン作物保険会社(PCIC)、協同組合開発局(CDA)からも参加がありました。

参加者の記念撮影

パートナーMFIによる発表内容概要を以下の通りです。 主要コンポーネンツである農業向けマイクロファイナンス融資商品の開発導入、金融教育研修の実施、および社会的業績管理(SPM)の導入といった3分野についてそれぞれの得た成果、チャレンジ等を発表してもらいました。

1. 農業マイクロファイナンス融資商品について(発表団体:FATIMA)

本商品開発による成果:

本商品が低金利の融資商品であること、そして特典として提供している農業技術支援、作物販売経路確保、間作の推奨などの結果、会員である零細農民の収入向上が確認できた。

他方MFI自体においても、会員の質の向上、ローンポートフォリオの最適化といった効果がみられた。

本商品導入におけるチャレンジ:

新商品を運用するための職員の能力強化

作物販売経路の継続確保

本商品導入における教訓:

農業融資はリスクが高いので、不作の際の緊急事態用貯蓄といったリスク回避措置が重要であることが分かった。

FATIMAの代表MARITESSEさん

2. 金融教育について(発表団体 AFCCO)

金融教育研修実施の成果:

会員の質の向上

貯蓄や負担金の拡大

会員が財産構築のノウハウを学んだ

金融教育研修実施により得た教訓:

農民に特化した金融教育が必要である

全てを網羅するのではなく、トピックに応じた研修プログラムを組む方が効果的である

3. 社会的業績管理(SPM)の導入について(発表団体:BCCI)

SPM導入に取り組んだ成果:

自組織のイメージ改善につながった

商品の多様化及び改善ができた

職員及び役員の能力が強化された

SPM導入に取り組む際のチャレンジ:

オペレーションコストの増加

ワークフローの見直しにかかる職員同士の諍い

SPM導入に向けた今後の取り組み:

事業計画の見直し

組織内業務プロセスのマニュアル化

会員に対する満足度調査の実施

BCCIのSOGOD支店長であるMINDAさん

2日目には各団体より、本案件で得た効果をどのように継続させていくか発表がありました。

AFCCO:

協同組合は概して革新を好まず、昔ながらのやり方を諾々とする傾向にある。本案件を通じて、チャレンジを続けていく事の重要性がわかった。本案件の参画により、ガバナンス、金融教育、社会的業績管理の分野で著しい改善がみられた。今後もこの経験を軸に、AFCCOの来る10年の戦略を考えていきたい。

BCCI:

協同組合は公的サービスであり、社会的業績管理は我々協同組合の核である。BCCIは今まで財政的パフォーマンスを重要視してきたが、本案件参画により、顧客を念頭に置いた経営が重要であることがわかった。今後は本案件で得られたノウハウを活用し、経営層の能力強化、効果的な人事に務めると共に、サービス革新にも取り組んでいきたい。

FATIMA:

農業向けマイクロファイナンス融資商品を他の視点でも展開していく予定。また農業を営む会員を増やしていきたい。

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不定期なブログ更新となりましたが、ご閲覧頂きありがとうございました。

2019年も、引き続きよろしくお願いいたします。

2018年6月以降の活動について

2018.12.25

お久しぶりです。前回のブログ更新からすでに6か月以上が過ぎてしまい失礼しました。

現地コーディネーターをしている当方ですが、先々週にフィリピンを撤退し、現在は日本にて来年2月のレイテ案件契約終了に向けての作業を進めています。

さてご無沙汰をしていた6月~12月までの活動は以下の通りです。前回ご説明したモニタリング活動を基本軸に、フォローアップやリフレッシャーの必要な内容について、適宜補完研修を実施してきました。例えば顧客保護原則や金融教育のファシリテーション技能についてです。

詳細については、今後少しずつ過去を振り返りながら、ブログを更新していきたいと思います。

金融教育研修を会員に実施するAFCCOの職員

2018年6月以降の活動

6月4日~8日      対AFCCO 第2回モニタリング(農民の為の金融教育指導研修、顧客保護原則ワークショップ)

6月19日~22日    対BCCI ガバナンス強化研修

7月11日~14日    対FATIMA 第2回モニタリング(農民の為の金融教育指導研修、顧客保護原則ワークショップ)

7月14日~21日    対BCCI 第2回モニタリング(農民の為の金融教育指導研修、顧客保護原則ワークショップ)

9月28日~10月2日 対FATIMA 第3回モニタリング(ガバナンス強化研修、金融パフォーマンス研修)

10月3日~5日    対AFCCO 第3回モニタリング

10月9日~12日    金融教育上級編研修

10月13日~16日  対BCCI 第3回モニタリング

11月7日~9日      対BCCI ポートフォリオクオリティマネジメント研修

11月12日~14日     対FATIMA ポートフォリオクオリティマネジメント研修

12月2日~3日      レイテ案件終了コンフェレンス

農業向けマイクロファイナンス商品導入検証状況について

2018.03.28

本案件の成果品(アウトプット)の一つである農業向けマイクロファイナンス商品の開発ですが、各パートナーマイクロファイナンス機関(MFI)共に概ね商品デザインを決定し、現在は導入検証を行っているところです。

今後はMFIから定期的に提出される進捗状況報告書、および現地に赴き実施するモニタリング視察を通して進捗状況を確認すると共に、必要に応じて補完研修および技術支援を行っていきます。

BCCIの所有するトウモロコシ農作地を視察する様子(南レイテ)

2月後半には第1回モニタリング視察を実施しました。各MFIの農業向けマイクロファイナンス融資商品販売・運用におけるプラクティスを確認し、商品手引書の微調整を行っていくのです。

日程は以下の通りです。

  • AFCCO:2月20日~22日
  • FATIMA:2月22日~25日
  • BCCI:2月27日~3月2日

モニタリング活動内容の大枠は以下の通りとなります。通常、2日間でプログラムを組みます。

1日目:

  1. 本融資を受けている農民からのヒアリング:新商品についてのフィードバック
  2. 顧客に対する金融教育研修の観察:MFI職員のファシリテーション技能について確認
  3. 農家訪問:顧客の農作の状況を視察

 2日目:

  1. 商品手引きの見直し
  2. 経営層および商品開発チームとの打ち合わせ:農民からのフィードバックを共有し、今後の戦略や計画について相談。

農民からヒアリングを行っている様子

今回のモニタリングでは、マーケティングの弱さや商品手引きに沿った運用が必ずしもされていない事が判明しました。また金融教育研修についても、研修時間が不必要に長かったり、講義型になってしまうのなど、ファシリテーション能力のさらなる強化が必要であるとの見解も出されました。

第2回報告会を開催します

2018.03.15

皆さまご無沙汰しております。

現在第2回報告会の開催を予定しております。ぜひ気軽に聞きにいらしてください。

  1. 日時: 2018年4月14日(土) 午前11時~正午
  2. 場 所: JICA東京(東京国際センター)4F セミナールーム402 アクセス
  3. 内容: 1)ポジテイブプラネットについて 2)プロジェクトの概要・進捗状況 3)質疑応答 

参加ご希望の方は、下記までご連絡お願い致します。 参加は無料です。

<連絡先>

特定非営利活動法人ポジテイブプラネットジャパン

担当: 若月

指導者の為のファイナンシャルリテラシー研修を実施しました

2017.09.15

9月4日~8日までレイテ島のタクロバン市にて指導者の為のファイナンシャルリテラシー研修を実施してきました。参加者はパートナーMFIの理事会メンバー、支店長、人事課職員等計26名。今回の目標は、ローン利用者がお金を運用する力を身に着けられるよう、その指導スキルを協同組合スタッフに習得してもらうことです。

グループワークに取り組む参加者

本プロジェクトの最終目標は零細農民の生計向上です。ですから単に農業向けローン商品を提供するだけではなく、将来に向けて財産を作り上げることがどうして重要か、具体的に金融計画をどう立てていくのかなど、ローン利用者の金融理解をサポートをする事も重要なのです。確かにお金があっても、それを運用する術(投資や預金)がなければ、将来にはつながりませんよね。

 また今回はジェンダー、つまり財産構築プロセスにおいて、家庭内の男女が平等に決断を下すことの重要性についても研修内容に含めました。さらに本研修は「指導者の育成」が主目標ですから、成人を対象に研修をする場合の効果的なファシリテーションやExperienced based learning(経験に基づいた教授法)についても実践を通して取り組んでもらいました。

お金に関して考えてもらいまいした

参加者からの評価は非常に高く、88%の参加者が「非常に良かった」、12%が「良かった」と感じてくれたようです。参加者は今後、ここで学んだスキルを基に独自の教材を作成し、他スタッフを指導すると共に顧客に対する研修も行っていかなければなりません。我々プロジェクトチームもモニタリングを行っていきますが、協同組合の組織的なコミットメントと積極的な取り組みを期待します。

FATIMAおよびBCCIを対象にしたローンアドミニストレーション研修を実施しました

2017.09.14

またまたご無沙汰してしまいました。

さて協同組合ごとに実施しているローンアドミニストレーション研修ですが、8月の8~11日にFATIMA、21~24日にBCCIを対象に本研修を行ってきました。目標はAFCCOの時と同じく、新商品デザインをオぺーレーションの視点から確認し最終化、実際に商品を取り扱うローンオフィサーに対して、新しい商品の知識や取扱スキルを提供することです。ちなみにFATIMAは北レイテにあるCALUBIAN市(図の1)、BCCIは南レイテSOGOD市(図)に位置しています。気候も異なりますので、主要作物の種類にも違いが見えます。

レイテ島

今回の研修により完成したFATIMAの新ローン商品デザインの概要は以下となります。

– 名称:3P’s(Puhunan Para sa Parag-uma 農民向けローン)
– 対象農作物:キャッサバまたはキャッサバとの間作によるビーナッツ/サツマイモ/コーン、ウベ、米
– ローン額:キャッサバ26,500PHP/has~、ウベ40,000PHP/has、米20,000PHP/has ※ただしローン申請者のキャッシュフローに応じて実際のローン額を計算し、返済可能な額を上限とする。
– パイロットテスト開始時期:2017年10月~

BCCIの方は残念ながら最終化までは至らず、現在は新商品デザインのワークフローの部分を微調整中、9月末の完成を目指します。近日中には9月4~8日に実施したファイナンシャルリテラシー研修の様子をご報告しますね。

対FATIMAの研修風景

対AFCCOローンアドミニストレーション研修を実施しました

2017.06.28

 PPJのフェイスブックにもアップしましたが6月13~16日までABYOG市でローンアドミニストレーション研修を行ってきました。今回はパートナー協同組合の内の一つ、Abuyog St. Francis Xavier Credit Cooperative (AFCCO)が対象です。

主な参加者は事業部門責任者、財務部門責任者、経営情報システム責任者、支店長、農業技術者専門家、商品開発担当者、そしてローンオフィサー。この研修は、新商品のデザインをオぺーレーションの視点から見据え内部プロセスに不具合が生じないか確認し最終化、かつ実際にフィールドで商品を扱うことになるローンオフィサーに対して、新しい商品の知識や取扱スキルを提供することを目的としています。研修の結果、新農業マイクロファイナンスローン商品はお米を対象にすること、ローンの返済は収穫時期に合わせ、金利のみ毎月返済とすることになりました。 

熱心に議論を交わすAFCCOの職員

今後の予定は、AFCCOの支店(Burauen、Abuyog、 Lapaz そしてAlang-alang)のカバーするエリアのお米の農期が始める11月に合わせてパイロットテストを開始、そしてローンサイクル終了する来年4月に新商品の見直しを行うことなっています。パイロットテストは全部で2ローンサイクル実施、プロジェクト終了までには新商品を最終化させる予定です。 

Abuyogの水田

農業向けマイクロファイナンスローンの新商品開発ワークショップを実施してきました

2017.02.14

 2月6日から10日までレイテ島・タクロバン市にて農業向けマイクロファイナンス(AMF Agricultural Microfinance)ローン商品開発ワークショップを開催しました。今回は本プロジェクトのパートナーである3つの協同組合から計26名が参加しました。お互いのアイデアや経験を共有・交換できたことで、1団体の枠を超えた商品設計の可能性を探求できたのではないでしょうか。

ワークショップの様子:ファシリテーターEDWIN PERAZ

  【スケジュール概要】

 1日目

  • – デマンド・サプライスタディーの結果報告
  • – AMFローン商品が何故必要なのか
  • – AMFローン商品開発における基本原理と開発プロセス

2日目

  • – AMFローン商品の概要定義

3日目

  • – 新商品のローンプロセス策定(Micro office Visioの使い方)

4日目

  • – リスク分析
  • – ワークインストラクション策定(プロセス毎の具体的な指示書)

参加者にとっては初めてのエクササイズも多く、ワークショップ中に詳細な商品デザインを定義するには至りませんでした。現地専門家によると、多くの協同組合が既存の(他の協同組合の)ローン商品デザインをコピペし、自団体商品として提供しているケースほとんどらしいです。特に今回は特定の農産品(タロイモ、米、トウモロコシ、ピーナツなど)をターゲットにしたローンであり、それぞれのコモディテイプロファイルに基づいてローン額を決めるとともに、付帯するリスクを分析し、具体的な対象法をきっちりと検討する必要があります。我々プロジェクトチームは今後も継続してデザイン工程を支援してきます。

修了書を受け取ってしうれしそうな参加者

農業マイクロファイナンス商品開発に向けてフィールドワークを行ってきました

2016.11.16

11月3日~11日にかけてレイテ島に行ってきました。今回の目標は現地の農業マイクロファイナンス市場、特に顧客のニーズと既存サービスの調査です。9日間かけてレイテ島のパートナー協同組合3か所(Calubian、Abuyog、Sogod)を北から南へと廻ってきました。

農業マイクロファイナンス商品開発の第一歩となる今回の調査では、「コモディティプロファイル」も併せて実施しました。「コモディティプロファイル」とは、農作物の生産プロセス(土地づくり、耕地、病害虫防除から収穫まで)におけるキャッシュフローを洗い出すツールです。具体的には農民の毎月の人件費と材料費・設備費を具体的に算出します。農業は気候や災害の影響を受けやすく、よって農業マイクロファイナンス商品は一般的にリスクが高いといわれています。ですので農民のキャッシュフローに合わせた貸出金額や返済時期を設定することが、マイクロファイナンス機関(MFI)にとって非常に重要となります。

ココナッツのコモディティプロファイル作成中

また現地ステークホルダー計20団体以上(地域の農政を司る公的機関、パートナー協同組合、協同組合の顧客である農民、作物保険を提供している政府機関、協同組合と競合関係に当たる正規・非正規金融機関)に対しインタビューを行いました。ここで収集した情報を分析し、市場の現状と顧客のニーズを明確にしていくことで今後開発していく商品デザインのベースを作り上げていきます。

移動が多く体力的に疲弊しがちな出張ではありましたが、顧客である農民との交流は本プロジェクトを実施していく上で新たなモチベーションを与えてくれました。普段はマニラにある現地パートナーのオフィスで仕事をしており、本プロジェクトの最終的な受益者である農民の生活に触れる機会はありません。「百聞一見にしかず」と言いますが、やはり現地に行くことから始まるのですね。

6月以降の状況

2016.10.18

お久しぶりです。前回のブログから大分時間が空いてしまい大変失礼しました。プロジェクトチームの人員体制の変更等でブログの更新がすっかり滞ってしまいましたが、プロジェクトの方は予定通りに進んでいます。来月からは被災した零細農民のニーズに答える農業マイクロファイナンス融資商品の開発のためのニーズ調査を開始する予定です。

さて、6月以降に実施した活動を以下、簡単にご報告します。

6月~7月:社会的業績管理(SPM)戦略改定ワークショップの実施

本プロジェクトのパートナーとして選定した3つの協同組合型マイクロファイナンス組織(MFI)に対してSPM戦略改定ワークショップを実施しました。このワークショップを通して、MFIは実際にSPM(社会性と財務面のバランスの取れた経営を目指すマネジメント手法)を組織の戦略や事業計画に織り込む作業に取り組みました。具体的には、①組織のコアバリューと使命の明確化、②組織の現状分析、③組織の戦略目標達成までのシナリオを定めた戦略マップの作成、④社会性、財務、顧客(顧客とステークホルダー)、内部統制(業務管理、顧客管理、技術革新、制度)、資本(人材、情報、組織)の5つの視点から戦略毎の目標を定めたバランススコアカード(BSC)の作成です。ちなみにこのBSCが各組織のSPM戦略計画であり、我々が戦略の進捗状況をモニタリングする際の指標となります。

協同組合は本来的に会員である顧客の便益に資する組織であるものの、このSPMというマネジメント手法、またその概念は、参加した理事やマネージャーたちにとって新しいものであったそうで、大きな手ごたえを感じるワークショップになりました。

戦略マップの作成

8月:ガバナンス研修の実施

8月10~12日の3日間、パートナーMFIの一つ、Abuyog St. Francis Xavier Credit Cooperative(AFCCO)に対してガバナンス研修を実施しました。本トレーニングは社会的パフォーマンス向上の一環として、MFIの理事を含めたトップマネジメント層を対象に、効果的なガバナンスについて理解し、日々の業務に活かしてもらうことを目的としています。AFCCOはハイエン台風の被害が最も深刻であったAbuyogという地方にあり、会員数の減少に伴う経営状態の悪化に苦しんでします。そこで原状回復のための支援として、本研修を追加措置として行いました。

ガバナンスに関する知識のクイズ

9月:SPM戦略改定フォローアップワークショップ

9月には再度パートナーFMIを訪問し、SPM戦略改定ワークショップにてドラフトしたBSCの見直しと最終確認を行いました。3~4日はFATIMA Multi-Purpose Cooperative (FATIMA)、5日~6日にはBontoc Multi-Purpose Cooperative (BCCI)を訪問、そして27日~28日はAFCCOに対してフォローアップワークショップを実施しました。MFIは今後このBSCに定めた計画を実行し、顧客の保護と持続的かつ財務的に自立した経営の実現を目指していきます。 

今後はもっと頻繁に進捗状況を共有して参りますので、何卒よろしくお願いします。